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大阪地方裁判所 平成5年(ワ)1289号 判決

反訴原告

阿部哲也

反訴被告

株式会社ミヤタ

ほか一名

主文

一  反訴被告らは、連帯して反訴原告に対し、三六五万〇〇一二円及びこれに対する平成三年一二月一三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を反訴原告の負担とし、その余を反訴被告らの負担とする。

四  本判決のうち、反訴原告勝訴部分は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

反訴被告らは、連帯して反訴原告に対し、一三六六万二八二〇円及びこれに対する平成三年一二月一三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、停止中の普通乗用自動車に普通貨物自動車が追突し、普通乗用自動車の運転者が負傷した事故に関し、右被害者が普通貨物自動車の保有者及び運転者を相手に、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条、民法七〇九条に基づき、損害賠償を求め、提訴した事案である。

一  争いのない事実等(証拠摘示のない事実は争いのない事実である。)

1  事故の発生

次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 平成三年一二月一三日午後一一時二〇分ころ

(二) 場所 大阪府寝屋川市松屋町一三番一号路上(以下「本件事故現場」ないし「本件道路」という。)

(三) 事故車 反訴被告株式会社ミヤタ(以下「反訴被告会社」という。)が保有し、かつ、同佐々常夫(以下「反訴被告」という。)が運転していた普通貨物自動車(なにわ四四も五七三九号、以下「反訴被告車」という。)

(四) 被害車 反訴原告が運転していた普通乗用自動車(なにわ五五う一五九六号、以下「反訴原告車」という。)

(五) 事故態様 停止中の反訴原告車に反訴被告車が追突し、同車が約一・一メートル前方に押出され、さらにその前方に停止していた車両に追突し、反訴原告が負傷し、反訴原告車に修理費等約三八万円の損害が生じた(ただし、物損については示談により解決済み)もの(乙第二、第四号証、弁論の全趣旨)

2  責任原因

(一) 本件事故は、反訴被告の前方不注視等の過失が原因であり、反訴被告は、反訴原告に対し、民法七〇九条により、反訴被告の被つた損害を賠償する責任がある。

(二) 反訴被告会社は、反訴被告車の保有者であり、同車を自己の用に供する者として、自賠法三条により、反訴原告の被つた損害を賠償する義務がある。

3  治療経過及び治療費

本件事故により反訴原告は、平成三年一二月一三日、上田病院に通院(実通院日数一日)し、同月一九日から平成四年六月三〇日まで本田病院に通院(実通院日数一四三日)し、その後も同病院に通院し、また、同年四月九日から同年五月一九日まで関西医科大学附属病院に通院(実通院日数八日)し、同原告が負担した治療費は、合計八五万四一九〇円(うち未払治療費二万一八二〇円、既払治療費八三万二三七〇円)であつた。

4  損益相殺

反訴原告は、本件事故による損害に関し、反訴被告らから治療費として(前記3に記載した八五万四一九〇円中)八三万二三七〇円、休業補償として一四〇万円(合計二二二万九三七〇円)の支払いを受けた。

二  争点

1  反訴原告の後遺障害の内容、程度

(一) 反訴原告の主張

反訴原告は、本件事故により、左上肢痛、左前腕から手先にかけての知覚障害があり、ホフマンテストは陽性であり、頸椎症性脊髄症の後遺障害があり、同障害は、自賠法施行令二条別表(以下「等級表」という。)一二級に該当する。

(二) 反訴被告らの主張

反訴原告は、自動車保険料率算定会(以下「自算会」という。)により、頸部の頑固な頭痛、耳鳴り等の諸症状の訴えについて、医証、レントゲン写真、CT等からは、昭和五七年三月一六に発生した事故に基づく既存障害(等級表一二級一二号)を超える症状所見は認められず、加重障害には至らないとして非該当との認定を受けている。

本件は、軽微な追突事故であり、反訴原告の加療が長期・遷延化したのは、右既存障害の他、頸椎の加齢的退行変性椎間板狭小化、骨棘、脊柱管の軽度狭窄、反訴原告の心因的要因等によるものであり、しかも、症状が固定したとされる平成四年五月以降、反訴原告は稼働しており、得べかりし利益との差額は立証されていないのであるから、本件事故により反訴原告に等級一二級に該当する後遺障害が生じたとして、抽象的な労働能力の喪失を想定し、これにより逸失利益を算定することは相当ではない。

2  素因減額

(反訴被告らの主張)

前記主張のとおり、反訴原告には、加齢等による器質的異常等の体質的・心因的素因が存在し、そのため、加療期間、就労不能ないし制限期間の遷延、長期化等をもたらしたのであるから、損害額の算定に当たつては、適正な寄与率による減額がなされるべきである。

3  その他損害額全般(反訴原告の主張額は、別紙損害算定一覧表のとおり)

第三争点に対する判断

一  後遺障害の内容、程度

1  治療経過

前記争いがない事実に加え、甲第一四、第一七号証によると、反訴原告は、本件事故により、平成三年一二月一三日、上田病院に通院(実通院日数一日)し、同月一九日から平成四年一〇月二〇日まで医療法人盛和会本田病院に通院(実通院日数一八六日)し、その後も同病院に通院し、また、同年四月九日から同年五月一九日まで関西医科大学附属病院に通院(実通院日数八日)したこと、本田病院における初診時、頸部捻挫、両上腕神経損傷との診断を受けたが、同原告の主訴は、後屈で両手指にピリピリ感がある等のもであり、C六・七の骨軟骨症があるとされ、同病院の医師は、同原告の要加療期間を二~三か月程度と判断していたことが認められる。

右事実に後掲の各医証を合せ考慮すると、同原告は、遅くとも平成四年一〇月二〇日には症状が固定したものと認められる。

なお、乙第四号証及び弁論の全趣旨によれば、反訴原告は、本件以前である昭和五七年三月一六日にも交通事故に遭い、平成四年一一月二〇日、自算会から、頸部の頑固な神経症状があるとして等級表等級一二級一二号に該当するとの認定を受け、このことから、本件における事前認定においても、同等級を超える加重障害はないから非該当との認定を受けたことが認められる。しかし、同事故は、本件事故の約八年九か月前の事故であり、前記頸部の頑固な神経症状という程度の後遺障害が本件事故時にまで残存するとは考え難いこと、本件事故前に反訴原告に何らかの障害が出ていたことをうかがわせる事実は認められないこと、自算会において、以前(本件でいえば、前記昭和五七年時)に後遺障害を認定した事実がある事案に関し、同障害が当該認定時(本件でいえば前記平成四年時)にまで同障害が残存しているか否かにつき厳密な認定を行わないまま、前回の認定(本件でいえば一二級)を超える後遺障害(加重障害)が当該認定時に生じているか否かで判断する取り扱いを行つていることは周知の事実であること等を考慮すると、前記自算会による事前認定が非該当であつたことが格別の重要性をもつわけではなく、結局、本件事故時に、昭和五七年三月一六日の事故による後遺障害が残存していたことを認めるに足る証拠はない。

2  証拠状況

反訴原告の後遺障害の内容・程度に関する医証の概要は、次のとおりである。

(一) 平成四年六月二日付け医療法人盛和会本田病院医師林卓夫の回答書(乙第五号証)

「初診時に頸部痛、両手指に疼痛、知覚障害があり、レントゲン検査によると、第六・第七頸椎後方への骨棘(変形症)があり、上肢腱反射亢進、ホフマンテスト陽性であり、その後、スパーリングテストも陽性であり、左上肢痛があり、左第八神経領域に知覚障害があり、頭痛、耳鳴り、頭部痛、両上肢の手肢振戦がある。なお、レントゲンによれば、加齢によるものと考えられる変形性頸椎症がある。

スパーリングテストに認められるように、左への頸椎回旋・側屈にて左上肢痛を認め、知覚障害があり、頑固な頭部痛、頭痛、耳鳴り等が残存するため、就労に制限がある。

症状固定の時期は、平成四年六月と考える。」

(二) 平成四年六月二二日付け関西医科大学耳鼻咽喉科医師土井直の回答書(乙第六号証の三)

「平成四年五月一四日、耳レントゲン、採血、心電図検査をし、同年五月一九日、聴力検査をしたが、耳レントゲン、採血、心電図検査上、特変はなく、ただ、聴力は、耳鳴り検査で、両側八キロヘルツ、ラウドネス五デシベルの耳鳴りを認めた。」

(三) 平成四年六月二四日付け関西医科大学附属病院医師玉置譲二の回答書(乙第六号証)

「平成四年四月九日、レントゲン検査によれば、C六・七間の椎間板が狭小化し、椎体が不安定であり、同月一五日、頸椎MRI検査によれば、C五・六、六・七レベルで脊柱管に軽度の狭窄が見られる。かかる検査結果は、通常の加齢性退行性変化として起こり得るものであり、事故との明らかな因果関係は不明である。反訴原告は、握力も四〇~五〇キログラムあり、手の巧緻運動性も障害されていない。デスクワーク程度なら十分可能である。ただし、長時間連続の就業は、困難かと思う。

頸椎椎間板変性と変形性脊椎症が元来あつたが、無症候性に経過しており、事故を契機として症状が発現したとも考えられる。また、患者自身の神経質なChanacteも症状(頭痛、頸部痛等)持続の一因子となつている可能性もある。」

(四) 平成四年八月四日付け医師小田康弘の回答(乙第六号証の二)

平成四年四月一七日、頸椎レントゲン検査をし、同月二四日、頭部CT、脳波検査をした。頸椎単純レントゲン写真上、第六・七椎体、椎間板にて変形性所見を認める。かかつ頸椎の変化は、ある程度は、加齢による変化と考えられる。

就労制限と関係のある所見としては、両手指のしびれ、動作時の振戦、特に巧緻運動障害が認められた。右臨床症状は、頸部症候群よるものであり、特にしびれ感、振戦等は、頸部交感神経刺激症状と考えられる。」

(五) 平成四年一〇月二〇日付け医療法人盛和会本田病院医師林卓夫の後遺障害診断書(甲第一七号証)

「平成四年一〇月二〇日、症状が固定し、第六・第七頸椎に骨棘著明、スパーリング・ジヤクソン・ホフマンテストいずれも陽性、著明な頸椎可動域制限があり、両手、特に左前腕から手先にかけ知覚障害がある。」

(六) 平成五年四月一三日付け医療法人盛和会本田病院医師林卓夫の意見書(甲第一号証)

「反訴原告は、左上肢痛強く、左前腕から手先にかけての知覚障害があり、神経学的にはホフマンテスト両側陽性であり、頸椎症性脊髄症であり後遺障害一二級相当と判断する。」

2  当裁判所の判断

前記医証により、反訴原告の後遺障害の内容、程度を検討すると、原告には、初診時から頸部痛、両手指に疼痛、知覚障害があり、レントゲン検査によると、第六・第七頸椎後方への骨棘(変形症)があり、上肢腱反射亢進、ホフマンテスト、スパーリングテスト等はいずれも陽性であり、左上肢痛があり、左第八神経領域に知覚障害があり、頭痛、耳鳴り、頭部痛、両上肢の手肢振戦が認められたこと、左への頸椎回旋・側屈にて左上肢痛を認め、知覚障害があり、頑固な頭部痛、頭痛、耳鳴り等が残存していたことについては、前記各医師の見解は概ね一致しており、ことに同原告の主治医であつた本田病院の林卓夫医師は、同原告の障害について、デスクワーク程度なら十分可能であるが、長時間連続の就業は、困難であり、病名は、頸椎症性脊髄症であり、後遺障害等級一二級に該当すると判断していること、乙第四号証及び弁論の全趣旨によれば、自算会における事前認定においても、同等級自体に該当しないとの判断を行つているわけではなく、前回(昭和五七年三月一六日)事故による認定が等級一二級一二号の頸部の頑固な神経症状であつたため、本件においてそれを超える障害はないとの理由で非該当と認定しているに過ぎない(したがつて、本件後遺障害が一二級に該当する可能性は否定していない。)ことが認められること等を総合すると、原告の後遺障害は、神経症状が他覚的に証明されているから、前記諸症状は全体として等級表一二級に該当するものと認めるのが相当であり、右認定を覆すに足る証拠はない(したがつて、これを否定する反訴被告らの主張は採用できない。)。

そして、労災補償において、労働基準監督局長通牒昭和三二年七月二日基発第五五一号により、後遺障害等級一二級の場合の労働能力喪失率が一四パーセントとして取り扱われていることは当裁判所にとつて顕著な事実であること、反訴原告は、長年、タクシー運転手として稼働し、昭和五七年以降は、個人タクシーの運転手として稼働していること、同原告の主治医であつた本田病院の林卓夫医師は、同原告の障害について、デスクワーク程度なら十分可能であるが、長時間連続の就業は、困難であると判断していること、同人の年齢が症状固定時五〇歳であること等を考慮すると、同原告は、本件事故により、労働能力の一四パーセントを喪失し(同率に見合う得べかりし利益と現実所得との差額が生ずることが推認される。)、同状態は、反訴原告主張にかかる四年間は継続したものと認めるのが相当である。

もつとも、前記のとおり、本件事故は比較的軽微な追突事故(追突され、反訴原告車は、約一・一メートル移動して前方の停止車両に追突し、修理費等の車両損害は約三八万円)であること、本件事故日には上田病院に通院したものの、その後通院を開始したのは、六日後の平成三年一二月一九日以降であることが認められるから、本件事故と前記障害との因果関係には疑念を差し挟む余地がないではないところ、前記医証によれば、反訴原告には、レントゲン、CT、MRI検査において、C六・七間の椎間板が狭小化し、椎体が不安定であり、C五・六、六・七レベルで脊柱管に軽度の狭窄が見られるところ、かかる検査結果は、通常の加齢性退行性変化として起こり得るものであること、同原告には、頸椎椎間板変性と変形性脊椎症が元来あつたが、無症候性に経過しており、事故を契機として症状が発現したとも考えられること、また、同原告自身の神経質な性格が症状(頭痛、頸部痛等)持続の一因子となつている可能性を否定できないことが認められ、これらが治療期間、休業期間の長期化、後遺障害の発生及びその程度の増悪にかなりの影響を及ぼしたと考えられる。かかる場合、前記因果関係は認め得るにせよ、本件事故を契機に反訴原告に生じた損害の全てを反訴被告に負担させるのは、損害の公平な負担の理念に照らし相当ではないから、右心因的・身体的素因を考慮し、過失相殺の規定を類推の上、後記同原告に生じた損害から四割を減額するのが相当である。

二  損害

本件事故により、反訴原告が八五万四一九〇円の治療費(うち、未払治療費二万一八二〇円)を負担したことは当事者間に争いがないので、その他の損害について検討すると、次のとおりである。

1  休業損害(主張額四五一万二〇〇〇円)

反訴原告は、平成二年一二月から平成三年一一月までの個人タクシーによる収入は、合計九一一万八九六〇円であり、同額から年間燃料費四六万六九〇八円、エンジンオイル(交換)代三万六〇〇〇円、タイヤ代二万円を差し引いた額が年間所得に当たる(年収八五九万六〇五二円、月収七一万六三三七円となる。)と主張し、その証拠として、自らが作成した甲第二ないし第一三号証(運転日報、枝番号省略以下同じ)、第一八号証(売上げ計算書)等を提出する。

しかし、右書証は、反訴原告が作成したものであり、記載された数値が正当であることの客観的裏付けがないのみならず、経費がその主張どおりであり、かつ、それに尽きることを認めるに足る証拠はない。他方、甲第一、第二二、第二三号証(確定申告書)によれば、反訴原告は、個人タクシーの事業所得の申告に際し、平成二年分の営業収入は五九四万四八二〇円、同営業所得は三八一万一六九五円(所得率約六四パーセント)と、平成四年分の営業収入は三四五万二七五〇円、同営業所得は一三〇万四九三三円(所得率三八パーセント)とそれぞれ申告していることが認められる。右申告所得額が真実の所得額をそのまま反映させたものであるかについては、疑いがあるものの、真実の所得額が同原告が主張するような高額なものではなかつたことをうかがわせるものといわざるを得ない。

そこで、右を踏まえ、当裁判所として原告の真実の所得額を検討すると、反訴原告本人尋問の結果によれば、同原告は、昭和一七年三月二〇日に生まれ、高校中退後、法人タクシーに勤務するなどし、昭和五七年以降、個人タクシー業務を行つており、本件事故当時四九歳であることが認められるところ、同事故の年である平成三年の賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・小学新中卒計・男子労働者の四五歳から四九歳までの平均賃金が五五〇万八二〇〇円であることは当裁判所にとつて顕著な事実であること、仮に前記反訴原告主張の年間売上額九一一万八九六〇円に平成二年の確定申告における所得率六四パーセントを乗じて所得を算定すると、五八三万六一三四円となり、右平均賃金と大差がない金額になること等を考慮し、同原告の年収は右平均賃金の程度であつたものと認めるのが相当と考えられる。

前記のとおり、反訴原告は、本件事故により、平成三年一二月一三日、上田病院に通院(実通院日数一日)し、同月一九日から平成四年一〇月二〇日まで医療法人盛和会本田病院に通院(実通院日数一八六日)し、その後も同病院に通院し、また、同年四月九日から同年五月一九日まで関西医科大学附属病院に通院(実通院日数八日)し、同年一〇月二〇日、等級表一二級に該当し、労働能力を一四パーセント喪失した後遺障害を残し、症状が固定(同日までの実通院日数合計一九五日)したものと認められ、かつ、本田医院の医師は、当初同原告の要加療期間は二~三か月程度と判断していたことが認められる。

右治療経過をもとに、本件事故日である平成三年一二月一三日から症状固定日である平成四年一〇月二〇日までの約一〇か月間につき、反訴原告の労働能力喪失の程度を判断すると、反訴原告は、本件事故後、三か月間は、労働能力を完全に喪失し、その後三か月間は、その五〇パーセントを喪失し、さらにその後症状固定日まではの約四か月間は、その三〇パーセントを喪失し、労働能力を一四パーセント喪失して症状が固定したものと認めるのが相当である(症状固定までの期間は、正確には一〇か月と約一週間ゆえ、約一週間の端数が生じることになるが、この点は、喪失率の評価に折込済みである。)。

したがつて、反訴原告の休業損害は、次の算式のとおり二六一万六三九五円となる(一円未満切り捨て、以下同じ。)。

5508200÷12×(3+0.5×3+0.3×4)=2616395

2  後遺障害逸失利益(主張額四二八万九〇〇〇円)

前記認定のとおり、反訴原告は昭和一七年三月二〇日に生まれ、症状固定日である平成四年一〇月二〇日当時五〇歳であるところ、平成四年の賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・小学新中卒計・男子労働者の五〇歳から五四歳までの平均賃金が五五三万三八〇〇円であることは当裁判所にとつて顕著な事実であり、前記認定の諸事情を考慮すると、反訴原告の同年の年収は右額を下回らないものと推認するのが相当である。

そして、反訴原告は、前記認定のとおり、本件事故による後遺障害により、労働能力の一四パーセントを症状固定後四年間喪失したものと認められるから、ホフマン方式により中間利息を控除し(五年の係数から一年の係数を差し引いた数値)反訴原告の後遺障害逸失利益の本件事故当時の現価を算定すると、次の算式のとおり、二六四万三三八五円となる。

5533800×0.14×(4.3643-0.9523)=2643385

3  慰謝料(主張額入通院慰謝料九四万円、後遺障害慰謝料二二〇万円)

本件事故の態様、反訴原告の受傷内容と治療経過、後遺障害の内容・程度、職業、年齢及び家庭環境等、本件に現れた諸事情を考慮すると、反訴原告の入通院慰謝料としては九四万円、後遺障害慰謝料としては二二〇万円が相当と認められる。

4  小計

前記争いのない治療費を含め、以上の損害を合計すると、九二五万三九七〇円となる。

三  素因減額、損害の填補及び弁護士費用

1  前記認定のとおり、素因減額として、本件事故により生じた損害から四割を減額するのが相当であるから、記損害合計から同減額をすると、残額は五五五万二三八二円となる。

2  本件事故により、反訴被告らから合計二二三万二三七〇円(治療費として前記八五万四一九〇円中八三万二三七〇円、休業補償として一四〇万円)の損害が填補されたことは当事者間に争いがない。したがつて、前記損害残額から右額を控除すると、残額は三三二万〇〇一二円となる。

3  本件の事案の内容、審理経過、認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としての損害は三三万円が相当と認める。

前記損害合計にこれを加えると、損害合計は三六五万〇〇一二円となる。

四  まとめ

以上の次第で、反訴原告の反訴被告に対する請求は、連帯して三六五万〇〇一二円及びこれに対する本件事故の日である平成三年一二月一三日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこられを認容し、この余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大沼洋一)

損害算定一覧表

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